たまにはこんな景色の前で、立ち止まってみるのもありかな


by jeepway
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空飛ぶ馬 北村薫 (創元推理文庫)

短編であり、何度目かの読み直しのため、一冊が終るまでにいろいろと浮気をしてしまっていた。今回も、2回続けて読み返してしまった。でも、何度読んでもいい、いつ読んでもいい、大好きな作家だ。

北村薫のデビュー作「円紫さんと私」シリーズの第一弾。私が出会ったのは数年後の文庫版だが、すぐに、虜になってしまった。当時は3作目の「秋の花」までが文庫で出ていたため、一気に、また繰り返し読んだ。ミステリだけど、何度読んでもいい、何度読んでも違った発見がある、読み終わった後の満足度がすばらしかった。ミステリではくくれない、私の中には、”北村薫”というジャンルがある。

「空飛ぶ馬」はもちろん文庫で読み始めたが、友人に貸したら、帰ってこなかった…
そのため、その後は読みたくなったら借りてくる、ということを何度か繰り返したが、先日我慢できなくなって再購入した。手元になかったため、他よりは読み込みが浅かったのだろか?それとも、その後の北村作品に触れてきたからなのか、今回はものすごく新鮮だった。

大学生の「私」がとても若々しくて、社会人の「私」を知っているこちらからして読むと、なんとほほえましいことだろう。そしてまっすぐで、意志があり、自己を求めている。「私」の成長を見守っている気分だ。初読当時、私は「私」とほぼ同年代を過ごしていたので、余計にそういった思いが強い。人が成長するということはこういうことなのか、と感嘆した。当時の私ではこういった感想は決して出ては来なかっただろう。

そして、どんな言葉を並べるよりも、今回の、私の感想を言い表した文が、本文中にあった。今までは、さらっと、読みすごしてきたはずなのに、今回は、響いた。ここに書いておこう。

「昔、わたしのいた劇団に、あなたによく似た人がいたんです。元気いっぱいで、何というか、そう光輝いていましたね。」
そのどこが私と似ていたのだろう。
「初恋の人ですか?」
ご主人は大きな手を顔の前で振った。
「とんでもない、役者が違いますよ。―――――。天才ですね。今は押しも押されぬ大女優です。でも、わたしはあの頃の演技が一番凄かったような気がしますね。そりゃあ今の方がうまいのかも知れません。しかし、あの時に返って、あの演技をしろと言っても、もうできないでしょう。」
円紫さんは、紅茶を啜ると、
「怖い話ですけれど、そういうこともあるでしょう。また、そうでなかったら若い者は浮かばれません。」

そう思うには、早すぎかな??
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by jeepway | 2004-09-18 01:05 | 読書/tv/映画